『日本での起業』


シリコンバレーに住んでいると、スタートアップの起業の話題はいたるところに転がって
いる。
勤めている会社からスピンアウトして新しいビジネスを始めたり、スタートアップ企業への
誘いがあったり。また実際にスタートアップ経験がある人もたくさんいる。 
現に私自身も3社ほどスタートアップの経験がある。
最初の1社は業界の大手に買収され社員の持っていたストックオプションは買収先の上場
企業の株式になった。2社目、3社目は陽の目を見ることなく、会社を閉めて一部の資産や
IPなどを他企業に売買した。
スタートアップ企業に入る人のモチベーションはやはりIPO(株式上場)だが、昨今では
IPOまでいたるスタートアップは非常にすくなくなり、スタートアップ企業の”上がり”は、
会社の売却と見るのが一般的だろう。そういう意味では、自分のスタートアップキャリアは
1勝2敗といったところか。   
シリコンバレーではこんなに一般的にあるスタートアップの起業だが、日本ではどうなの
だろうか?2000年以前では、もっぱら日本での起業は難しいと言っていた時代もあったが、
最近はそうでもないという話も聞く。実際にはどんな違いがあるのだろうか、何が変わったの
だろうか。 シリコンバレーと日本のいくつかのデーターを比較しながら検証してみたい。 



2つを比較する前に、シリコンバレーと日本では産業構造やビジネスのバックグランドが
違うということを数字で見てみたい。 
製造業の比率はシリコンバレー25%に対して日本は31%。思っていたほど大きな差はない。
会社のCEOの女性比率や大学院以上の学歴保持比率はどうだろうか?
シリコンバレーでには女性CEOが28.2%もいるのに対し、日本では4.5%のみ。
大学院以上の学歴保持のCEOはシリコンバレーでは33.1%に対して、日本はわずか2.8%
でしかない。
日本では残念ながら大学院に進学する人数もすくなければ、進学後も企業にはいる人も
少ないという現状を反映している。逆にいえば、アメリカでは大学院でしっかりとビジネスな
どを学ばなければ企業の経営は難しいと投資家などが判断する現状を反映しているのかも。 
もう一つ面白いのは、日本ではCEOになる人のバックグランドの半数程度(51.3%)が
Sales/Marketing出身にもかかわらず、シリコンバレーではSales/Marketing(26.6%),
Production (14.4%), R&D (6.9%)とある程度のバラツキがあることだ。
どんな組織にもCEOになれるチャンスがあるということだけでなく、どんな組織にもCEOに
向いている資質をそなえた人材がいるということだろう。 
日本では、研究開発の人は学者肌で企業の経営には向かないなどというステレオタイプな
表現がいまでもよく聞かれる。  
次にスタートアップを行う場合の資金集めや失敗した場合のリスクの考え方の違いは
どうだろうか。
アメリカでのスタートアップに対する世間からの見方はいわずもがな、ポジティブなものが
多い。資金集めも圧倒的なVCの資金量をみても、バレーのあちこちにAngel言われる初期
ビジネスへの投資家がいることからも、日本よりもずっと有利なことは間違いない。 
失敗にしても、ネガティブなキャリアとはならず、逆に失敗を経験していることを買われて、
次のスタートアップには有利とする見方がシリコンバレーでは一般的だ。
それでは日本はどうだろうか。 
1999年以前と以降で破産に対する意識を比べてみると、1990以前は非常にネガティブと
なっている。
悪い結果が積み重なって起きたできことであり、責任を社会的にも金銭的にも追求される
ケースが多い。 ところが2000年以降には、意識が少し変わっており、破産も当人達の責任
というよりも急激な経済変化により起きてしまったこと、また責任も金銭的には負う部分は
変わらないが、社会的には許容するメンタリティも生まれてきている。
資本金については、できる限り大きいほうがよいという99年以前の考え方から、2000年
以降には、少なくしてスタートアップ設立の機会を増やそうとする法的環境や社会の
サポートも整ってきている。 

そして、実際に99年以降に日本でも確実にスタートアップ企業が以前よりも増えて、
10年たった今現在でも、平均値をとれば一般企業よりも高い成長率で伸びているデーター
もある。
2004年度から2008年度の間に設立され、今現在も生き残っているスタートアップ企業の
カテゴリー4種はISPとそれに伴う Techinical Suport, Telecomm Service,
Packaged Software, CustomizedSoftwareでこれら4カテゴリーを合わせると800社程度
もある。
なかでもCustomized Softwareは日本では非常に成功し、現在も活動を続けている。 
その数は600社以上だ。 
これら4種の共通項を考えると、これらの業種の顧客が非常に大きく安定した企業ばかりと
いうことがあげられる。スタートアップ企業をささえるマーケットが大きく安定している分野
では日本でもスタートアップが成功しやすいし、2000年以降に成功しているということであろう。 
日本人はリスクをとらない、日本にはスタートアップを起こすスキルがある人が少ない、
日本にはスタートアップを起こすインフラが整備されていない、、、 いずれも我々の気持ち
に潜んでいる間違った知識だったのかも知れない。
日本の社会構造を理解して、安定した大きな顧客がいる分野には引き続きスタートアップの
チャンスがあるだろうし、その分野のスタートアップ企業は今後も成長していくのだろう。 

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